シリコーンゴムとは

①シリコンとは?  シリコンとは元素の種類である「ケイ素(珪素)」のことです。
地球上の地殻の約28%は「ケイ素」の元素からできていて、その量とは酸素についで2番目に多い元素です。(1番:酸素(O)46.6%、2番:ケイ素(Si)27.7%)

石や砂はケイ素の酸化物で、一般的に言う「ケイ石」とは、石英や水晶などのように二酸化ケイ素で構成された岩石の総称です。
水晶は石英ですが、中でもキズが無く、特に無色で透明度が高いものを「水晶」といいます。


②シリコーンとは 「シリコーン」とは自然界に存在しているケイ石に、人工的に化学反応を加えたものが原料になる化合物です。その中で有機基の結合しているケイ素が酸素と連なってできている高分子化合物を「シリコーン」と呼びます。

「シリコーン」は、自然界には存在しない物質であり、人類が作り上げたものです。

現代社会の中ではあらゆる産業分野で製品として使用されており、とっても優れた素材です。様々な業界で利用されており、今日の生活に切り離せない素材です。

化学変化や蒸留することにより、樹脂系のレジン、ゴム系のシリコーンゴム、液状シリコーンゴム、ガス系のシラン、オイル系のシリコーンオイルなどが生成されます。
※画像はイメージです。


③シリコンとシリコーンの違い 「シリコン」と「シリコーン 」の名称が似ているため、世間ではよく間違えられて使用されております。

「シリコン(Si)」は元素名称であり、「シリコーン」はケイ石(SiO2)に含まれるケイ素(Si)を取り出し、化学変化させることで生み出される物質です。


④シリコーンの特性

シリコーンの特性は多岐にわたります。
耐熱性、 耐寒性、 撥水性、対候性、耐油性、耐溶剤性、 耐薬品性、離型性、電気絶縁性、熱伝導性、導電性、圧縮永久ひずみ性、難燃性、耐屈曲疲労性、消泡・整泡、耐引裂き性、耐引張り性、ガス透過性、化学的安定、耐放射線性、防振性、非腐食性、生理的不活性、無味無臭、無色透明等です。

これらの特性は、必要な機能に応じて様々な用途で生かされております。一方の特性を伸ばすと他方が軽減されてしまう場合もあり、多角的に分析をして慎重に製品へ反映しております。



⑤シリコーン樹脂

シリコーン樹脂(シリコーンを主成分とする合成樹脂)のうち、ゴム状のものを言います。シリコーンゴム、ケイ素ゴムとも言われています。
一般に液体の状態で市販されており、触媒を加える事でシリコーンの重合反応により硬化します。

シリコーン樹脂にはシリコーンオイル、シリコーンレジン(ワニス)、シリコーンゴムなどのシリコーンポリマーがすべて含まれます。
国内ではシリコーン製品の中で電気絶縁用ワニスが初めて大量に実用化しました。そのシリコーンレジン(ワニス)が樹脂状であるため、シリコーン樹脂やケイ素樹脂という言葉がシリコーン全体を表すことになりました。



⑥シリコーンと他の合成ゴムの違い 一般的にシリコーンゴムは合成ゴムに含まれ、区分は「シリコーン」と「その他合成ゴム」に分けられます。

シリコーンは分子がケイ素系であり、他の合成ゴムは炭素系です。

シリコーンゴムは他の合成ゴムと違い、発火点が高く、燃えにくい性質があるのですが、他の合成ゴムはシリコーンゴムと比較して、発火点が低く燃えやすいのが特徴です。

この特徴を生かし、それぞれのゴムの試験片を点火することにより識別が出来ます。シリコーンゴムは点火に時間がかかり燃えづらいです。その他合成ゴムはシリコーンゴムよりも早く試験片が燃えてしまい、黒い煙を発生するのが特徴です。

※画像はイメージです。


⑦シリコーン特有の柔軟性と硬さ

シリコーンゴムは主原料であるシリコーンポリマーに加工補助剤を始めとする様々な配合剤を添加します。
その一つであるシリカ系粉体充填剤というものの添加量が柔硬に大きく影響します。一般的に、このシリカ系粉体充填剤の添加量が多いと、ゴム硬度が高く(硬く)なる傾向があり、逆に添加量が少ないとゴム硬度は低く(柔らかく)なる傾向になります。

ゴム硬度を低く(柔らかく)する場合、シリコーン系のオイルを添加する方法も一般的に用いられています。
イメージとしては、硬いシリコーンゴムは粉分が多く、柔らかいシリコーンゴムはオイル分が多いことになります。



⑧シリコーンゴムは低温でも抜群の性能 シリコーンゴムは一般のゴムと比較し、低温でも抜群の性能があります。
他の有機物質では耐えられないような低温の状況下でも、本来の性質を維持できます。

シリコーンオイルやシリコーンゴムの素材でも同様であり、シリコーンの基本構造である、原子の配列によるものです。

シリコーンゴムの限界温度は一般的に-40℃~-55℃であり、-100℃まで耐えられるシリコーンゴムも製造可能です。-70℃位の素材は有機系でも製造可能ですが、シリコーンゴムの持つ耐熱性・耐寒性両面の特性は困難です。

-100℃で耐えられる製品はドライアイスが-78.9℃なので、ドライアイス専用の冷蔵庫のドアのパッキンにはシリコーンゴムが最適です。

一般の有機系ゴムは-30℃~-40℃で硬くなってしまい、隙間が出来るため役に立ちません。
また、隣に高温になるモーターなどがあると、耐寒性と耐熱性の両立が必要不可欠です。シリコーンゴムはこうした分野でその素材の性能を発揮します。

代表的な例として自動車があります。
エンジンの周辺の部材は高熱、寒冷地での使用に耐えられなければなりません。シリコーンゴムはそのメインの素材のひとつとして活躍しています。


⑨加硫・架橋 加硫・架橋は同様の意味を持ち、原料ゴムに弾性や強度を持たせる為の分子間での化学結合をつくる作業を言います。

主に硫黄や過酸化物などで構成される加硫剤、架橋剤と呼ばれ
る配合剤をゴムコンパウンドに混ぜ合わせて、成型機を用いて硬化させるものです。ゴムの分子同士を結合させるための橋渡しをする行為から、そう呼ばれていると言われています。

 加硫方法には大きく分けて、2種あり熱硬化型と常温加硫型に分別できます。
液状シリコーンは付加反応を利用した熱硬化型と室温の湿気などと反応し硬化する縮合型があり、用途により使いわけます。

ミラブルシリコーン(粘土状)は熱硬化型のみですが、液状シリコーン(水飴状)の加硫にも用いる付加反応型の熱硬化加硫と過酸化物を加硫剤とした過酸化物加硫の熱硬化型があります。

それぞれ用途、コストに見合わせて使い分けられます。
ミラブルシリコーンは主に金型が必要な製法で、液状シリコーンは、金型レスでも製造可能な製法になります。


⑩シリコーンは安心安全 シリコーンはその成分構成に毒性の物質を持たず、化学的に安定し、生理的にも不活性な事が『安心安全』を言われる理由です。

シリコーンポリマーは生体適合性も有しているので、万一、誤って食べてしまっても人体には無害と言われており、医療、食品、化粧品関連の分野に多く使用されています。

シャンプーなどの中にも入っているものもあり、身体に直接つけるコーティング材としても多く使用されています。アレルギー反応もほとんど起きないと言われてるのが一般的です。

シリコンには問題となっている鉛、水銀、カドミウム、六価クロム等の有害化学物質は含まれていません。
また、焼却処分をしてもダイオキシン等の有害物質も発生しません。
たんぱく質を含んでいないため、たんぱくアレルギーを起こしません。
直接肌に触れるゴム製品にも多く使われている、環境や体にもやさしい素材です。